ラジオ波治療のメリットとデメリット
~傷口が針一本分のため治療後の体力低下がほとんどなく、繰り返し治療が可能~
ラジオ波治療は患部に針を刺して行うので、開腹や開胸を伴う手術よりも体に対する負担が少なく、治療後の焼き残しが発見された時にも繰り返し治療が行えることが大きな利点といえます。
もしがんが再発した場合でも再治療が可能で、抗がん剤や放射線治療などと合わせて治療を行なうことも出来ます。
ラジオ波治療の適応は、一般的には腫瘍の大きさが3cm以下で腫瘍の数が3個以下、もしくは腫瘍が1つで5cm以下の腫瘍であれば、完全に治療を行なうことができ、合併症の確率も抑えられると言われています。
主に肝臓がんに実施されているラジオ波治療ですが、乳房を切除せずにがん細胞だけを死滅させることが可能なため乳がんの治療にも用いられており、切らない乳がん治療としても注目を集めているようです。
ラジオ波治療を先進医療や自由診療で受ける場合の治療費は、入院費などを含めると平均で40万円前後になります。
保険診療が認められているのは肝がんのみで他は臨床試験の段階
2017年4月時点で、ラジオ波治療が保険診療として認められているのは肝がんに対してのみで、その他の部位に対しては治療費は自己負担となっています。
先進医療の制度の下で行われている早期乳がんの場合も、入院や検査などには保険が適用されますが、治療費は実費となります。
特に「切らない治療」として関心の高い乳がんですが、数年前から一般の医療機関でも保険外の自由診療として治療を行なう病院が出てきました。
しかし、ラジオ波治療を受けたが再発してしまった患者がほかの医療機関に駆け込んでいるという報告が日本乳癌学会に複数寄せられ、研究以外の目的では行わないように要請が出ました。この通知に強制力はないものの、悪質なケースでは対応を検討するとしています。
なぜこのようなことが起きたのかというと、乳房は肝臓に比べて脂肪が多く、熱の伝わり方や組織の性質が違うため、肝臓の適応が当てはまらないということと、そもそも医師の技量不足という考え方があります。
臨床試験の段階である治療を受けるには、その治療のリスクをきちんと理解した上で治療を受けるか決める必要があるでしょう。
がん腫瘍の部位や大きさにより適用外になることも
ラジオ波治療の適応は先に言及したように長径3cm以下で腫瘍が3個以下、または腫瘍が1つで5cm以下の腫瘍と考えられています。
がんのサイズが大きくなるほど、十分な熱量を与えることができずに「焼き残し」が起きる可能性が高まります。もし全てのがん組織を死滅させることが出来なかった場合、早期の再発に繋がります。
他にもラジオ波治療の合併症を考えると、ラジオ波により細胞が熱凝固される範囲に重要な血管や器官が入っていると、それも同じように凝固されます。それにより血管が詰まると、その血管が養う範囲はすべて壊死することになります。
肝臓の周囲には重要な臓器がひしめき合っており、上部には心臓、下には胃や大腸があり、
肝臓の表面に近い部位にできた腫瘍を焼灼すると、場合によってはそのような臓器を損傷してしまう可能性があるので注意が必要です。
ラジオ波治療が日本に導入されたのが1999年。2004年に保険適応になってから一気に普及し、
肝細胞癌の患者様の約3分の1がこの治療を受けられ、およそ9600人の5年生存率は56.3%という結果が出ています。
これは手術と比較してもほぼ同程度の数値であり、身体に負担のかからない治療としてはかなり良い数字だと言えます。
ラジオ波が優れた治療だということは多くの研究によって明らかにされていますが、
腫瘍の場所によっては合併症を起こす危険性があるので、ラジオ波治療が適さない場合もあるということを認識しておくべきでしょう。