陽子線治療の特徴 体の中への透過力が高く、がん腫瘍をピンポイントで照射する 陽子線治療は、水素の元素核である陽子を、光速の70%ほどまで加速させてから体内のがん病巣にピンポイント照射する治療法です。 同じ仕組みを持つ重粒子線治療との違いは、重粒子で用いられる炭素イオンよりも粒子が軽いため、ビームを曲げやすく360度の方向から体内に照射することができます。 粒子が重い重粒子線は、がん腫瘍を殺傷する能力が陽子よりも高いですが、 その一方でがんの周囲に重要な神経や臓器がある場合は細心の注意が必要となります。 世界では重粒子線治療より陽子線治療の施設の方が多く、50施設以上で実施されており、そのうちの11施設が日本にあります。 アメリカには重粒子線の治療施設が無く、すべて陽子線で治療が行われています。 陽子線治療のメリットとデメリット 陽子線は粒子が軽く、ビームを曲げやすいため360度の方向から照射することが可能な回転ガントリーという装置が使用できます。 国内に限らず世界中で治療が行われており、各種がんに対するプロトコール(治療基準)も多くあるため、まだ医学研究の段階である重粒子線治療よりも比較的安全に治療することが出来ます。 重粒子線治療は細胞に与えるダメージが高い分だけ、照射する線量の調整がシビアで、 過去の事例が少ないために思わぬ有害事象を起こしやすいとも言えます。 それに比べて、陽子線治療は照射回数は増えるものの周囲の重要臓器を避けながら360度の方向から照射可能なので、より容易に治療を行うことが可能です。 世界での過去の治療者数を比べると、陽子線治療は約12万人、重粒子線治療は2万人弱となります。 北海道から鹿児島まで、国内18ヵ所の施設で治療が受けることができます。 https://www.antm.or.jp/05_treatment/04.html
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ラジオ波治療のメリットとデメリット ~傷口が針一本分のため治療後の体力低下がほとんどなく、繰り返し治療が可能~ ラジオ波治療は患部に針を刺して行うので、開腹や開胸を伴う手術よりも体に対する負担が少なく、治療後の焼き残しが発見された時にも繰り返し治療が行えることが大きな利点といえます。 もしがんが再発した場合でも再治療が可能で、抗がん剤や放射線治療などと合わせて治療を行なうことも出来ます。 ラジオ波治療の適応は、一般的には腫瘍の大きさが3cm以下で腫瘍の数が3個以下、もしくは腫瘍が1つで5cm以下の腫瘍であれば、完全に治療を行なうことができ、合併症の確率も抑えられると言われています。 主に肝臓がんに実施されているラジオ波治療ですが、乳房を切除せずにがん細胞だけを死滅させることが可能なため乳がんの治療にも用いられており、切らない乳がん治療としても注目を集めているようです。 ラジオ波治療を先進医療や自由診療で受ける場合の治療費は、入院費などを含めると平均で40万円前後になります。 保険診療が認められているのは肝がんのみで他は臨床試験の段階 2017年4月時点で、ラジオ波治療が保険診療として認められているのは肝がんに対してのみで、その他の部位に対しては治療費は自己負担となっています。 先進医療の制度の下で行われている早期乳がんの場合も、入院や検査などには保険が適用されますが、治療費は実費となります。 特に「切らない治療」として関心の高い乳がんですが、数年前から一般の医療機関でも保険外の自由診療として治療を行なう病院が出てきました。 しかし、ラジオ波治療を受けたが再発してしまった患者がほかの医療機関に駆け込んでいるという報告が日本乳癌学会に複数寄せられ、研究以外の目的では行わないように要請が出ました。この通知に強制力はないものの、悪質なケースでは対応を検討するとしています。 なぜこのようなことが起きたのかというと、乳房は肝臓に比べて脂肪が多く、熱の伝わり方や組織の性質が違うため、肝臓の適応が当てはまらないということと、そもそも医師の技量不足という考え方があります。 臨床試験の段階である治療を受けるには、その治療のリスクをきちんと理解した上で治療を受けるか決める必要があるでしょう。 がん腫瘍の部位や大きさにより適用外になることも ラジオ波治療の適応は先に言及したように長径3cm以下で腫瘍が3個以下、または腫瘍が1つで5cm以下の腫瘍と考えられています。 がんのサイズが大きくなるほど、十分な熱量を与えることができずに「焼き残し」が起きる可能性が高まります。もし全てのがん組織を死滅させることが出来なかった場合、早期の再発に繋がります。 他にもラジオ波治療の合併症を考えると、ラジオ波により細胞が熱凝固される範囲に重要な血管や器官が入っていると、それも同じように凝固されます。それにより血管が詰まると、その血管が養う範囲はすべて壊死することになります。 肝臓の周囲には重要な臓器がひしめき合っており、上部には心臓、下には胃や大腸があり、 肝臓の表面に近い部位にできた腫瘍を焼灼すると、場合によってはそのような臓器を損傷してしまう可能性があるので注意が必要です。 ラジオ波治療が日本に導入されたのが1999年。2004年に保険適応になってから一気に普及し、 肝細胞癌の患者様の約3分の1がこの治療を受けられ、およそ9600人の5年生存率は56.3%という結果が出ています。 これは手術と比較してもほぼ同程度の数値であり、身体に負担のかからない治療としてはかなり良い数字だと言えます。 ラジオ波が優れた治療だということは多くの研究によって明らかにされていますが、 腫瘍の場所によっては合併症を起こす危険性があるので、ラジオ波治療が適さない場合もあるということを認識しておくべきでしょう。
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がん光免疫療法とは? がん光免疫療法とは、がん細胞に発生しているタンパク質と結合する抗体に光感受性物質の薬剤を静脈に注射し、非熱性の赤色光を照射することで、病気によって変わったがん細胞を破壊するという治療法です。 がんの治療法としては新しい治療法で、2020年9月の楽天メディカルジャパンの記者発表もあり、現在非常に注目されている治療法です。 さらに、この疫療法では破壊されたがん細胞が免疫細胞に対する抗原となるため、免疫細胞が残ったがん細胞に対してさらに攻撃することも期待できます。 がん光免疫療法のメリット がん光免疫療法の最大のメリットはがん細胞だけを効率よく破壊できる点です。 手術では、どうしてもがん細胞の周囲の正常な細胞も取り出します、放射線治療でもがん細胞にのみ放射線を照射することは難しく、がん細胞に集まった免疫細胞にも合わせて攻撃してしまいます。 しかし、がん光免疫療法では光感受性物質を加えられた抗体ががん細胞と結合し、そこに非熱性赤色光を照射しと光感受性物質が反応をすることで、がん細胞を破壊します。 光感受性物質は、非熱性赤色光にのみ反応するようになっているため、薬剤と結合していない健康な細胞や非熱性赤色光が当たらない細胞は破壊されません。 よって、がん光免疫療法は、がん細胞に集まってきている免疫細胞や周囲への健康な細胞への影響が少ないのです。 がん光免疫療法のデメリット がん光免疫療法のデメリットは、がん光免疫療法によって治療できる部位が限られてしまう可能性があるという点です。 その名の通り「光免疫療法」ですので、光が届かない場合には治療ができません。 ですが、現在研究でどの部位にも非熱性赤色光が届くように進められているため、研究結果に期待したいところです。 今後の課題 先日の楽天メディカルジャパンの記者発表で、厚生労働省が2020年9月に頭頚部がんに対する治療薬として、光免疫療法用薬アキャルックス点滴静注(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)を承認しました。 では、なぜ頭頚部がんのみなのでしょうか。 それは今回発表になったアキャルックスの標的がEGFR(上皮成長因子受容体)のがん種ごとの発現率も関与していると言われています。 EGFRの過剰発現率はがん種によって下記のに様に異なっています。 ■EGFR発現率 ・頭頸部がん 36-100% ・腎がん 50-90% ・非小細胞肺がん 40-80% ・前立腺がん 40-80% ・卵巣がん 35-70% ・胃がん 33-74% ・大腸がん 25-77% ・乳がん 14-91% ※Salomon DS,et al.(1995).Crit Rev Oncol Hematol 19 見ていただいたら分かる通り、100%に達しているのは頭頚部がんのみです。 このことが頭頚部がんだけが承認された要因の一つではないかと言われています。 このように標的となる受容体の多様化や多種の受容体を標的にする薬剤の開発、またはその他の治療法と併用することで、全てのがん種への効果が期待できる様になることが今後の課題であると言えます。
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「再発」とは 「再発」とは手術で取りきれていなかった目に見えない小さながんが残っていて再び現れたり、 抗がん剤治療や放射線治療でいったん縮小したがんが再び大きくなることをいいます。 治療した場所の近くで再発を指摘されるだけでなく、 別の場所で「転移」としてがんが見つかることも含めて再発といいます。 再発する確率は、男女ともに罹患(りかん)率、死亡率の高い大腸がんにおいて、患者さんのうち約19%の方に再発が認められ、ステージが上がると再発率も高くなるデータが出ています。 ※大腸癌研究会ホームページ 「大腸癌治癒切除後のStage別再発率と術後経過年数別累積再発出現率」より http://www.jsccr.jp/guideline/2019/document.html 「転移」とは 「転移」とは、がん細胞が最初に発生した場所から、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパ液の流れに乗って別の臓器や器官へ移動し、そこで増えることをいいます。 多いのは、リンパ液の流れが集まるリンパ節への転移(リンパ行性(こうせい)転移)、 肺や肝臓、脳、骨など血液の流れが豊富な場所への転移(血行性転移)です。 「播種(はしゅ)」とは、がんのできた臓器からがん細胞がはがれ落ち、近接する体内の空間(胸腔(きょうくう)や腹腔(ふくくう))に散らばるように広がることをいいます。 「浸潤」とは転移と別に考えられることも多いですが、原発巣から隣接する他の臓器に広がっていくので、転移の一つと言えると思います。 転移は、肺、肝臓、脳、骨などさまざまな部位に起こり得ます。原発から転移したがん病変を、転移した部位によって、肺転移、肝転移、脳転移、骨転移、腹膜転移(腹膜播種)などと呼びます。これらは、病気がその部分に広がっていることを示しています。 「原発巣(げんぱつそう)」 最初にできたがんの部位は「原発巣(げんぱつそう)」と呼ばれます。 例えば、大腸に初めにがんができ、肺に転移した状態は肺がんとは呼ばれず、 「大腸がんの肺転移(原発は大腸がんで、肺転移を起こした状態)」です。 この場合、肺にできたがんは、大腸がんの細胞と同じ性質を持っています。 つまり、「転移」した部分のがんは、もともとのがんと同じ性質を持つことになります。 そのため、例えば大腸が「原発」のがんであれば、 肺に転移した腫瘍(しゅよう)も、大腸がんに効果がある抗がん剤でないと反応しません。 「原発」「転移」は治療方針の決める大事な情報 初めてがんと診断された場合でも、病気が進んだ状態で発見されると、診断がついた時点でこれらの状態のいくつかを併せ持っていることもあります。 「原発」がどこか、その腫瘍が「転移」か「原発」か、再発した部位はどこかなどが、がん治療の方針を決める重要な情報になります。 いずれの転移であるかを知ることによって、抗がん剤などの副作用の強い薬などに挑むときの是非などについての判断材料になるので、大切な知識です。 血行性転移の場合、抗がん剤にのぞみをかけるのは間違った選択ではないかもしれません。 しかし、リンパ行性転移や播種性転移の場合、抗がん剤ではなく、免疫療法や遺伝子医療などの先端治療を候補に入れる方が良いことも多いです。 浸潤においても、手術後の再発が気になってきます。 再発が分かってからがんの治療を行うと選択肢が限られてくる可能性は高いです。 あらかじめ、先端治療なども候補に入れるべきかもしれません。 いずれにしても、同じ転移でも種類が違うと治療の選択肢も変わってくるので、 これらの転移の違いを良く調べて治療に臨むようにした方がよいことは間違いがありません。
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[がんのステージ] 「がん」の進行を表す言葉として、「ステージ」がよく知られています。 ステージ1~ステージ4までに分類されますが、「4」が一番悪いんでしょ?末期でしょ?くらいの認識で、その具体的な意味や分け方までご存じの方は少ないでしょう。 「著名人の○○さんが△△がんのステージ□□!」と報道されることがよくあります。中には、同じステージの患者さんが動揺したり、誤解したりする方がいらっしゃいます。 がんの種類によって、がんのステージの分け方は、全く異なります ◇「がんのステージ」とは? 日本の最新の基準では、胃がんは8段階、大腸がんは11段階、膵がんは7段階といったように、がんの種類によって段階の数は異なり、その分類法も全く異なります(*)。 がんの大きさ、深さ、広さ、どの臓器にどのくらい転移しているか、といった様々な要素を組み合わせて分類します。 これらのステージは、「がん」ごとに「取扱い規約」よって定義されます。この規約は定期的に更新され、少しずつ分類方法が変わります。 より正確に分類ができるように進歩しています。 よって、 「ステージ3の肺がんとステージ2の胃がんはどちらが進行しているか?」 という質問に答えはありません。 がんの種類によって分類の仕方が違うのですから、単純比較できないのです。 当然ながら、ステージ3の肺がんとステージ3の胃がんが「同じくらい悪い」というわけでも全くありません。 ◇同じがんの同じステージでも病状は違う たとえ同じがんの同じステージであっても、病状は全く異なることがあります。 例えば、肝臓にわずか1センチの転移が1カ所だけある大腸がんはステージ4ですが、全身の臓器に数え切れないほどがんが転移している状態でもステージ4です。前者であれば手術で切除することも検討できますが、後者であれば治療の主体は抗がん剤治療になるでしょう。 同じステージ4にもこれだけ幅があり、治療方針も全く違うのです。 つまり、報道された著名人と同じがん、同じステージであっても症状や治療法はそれぞれ異なります。 ◇ステージ4は末期ではない さらに、「ステージ4」=「末期がん」だと思い込んで落ち込んでしまう人もいます。 しかし、たとえステージ4でも治療を行うことで長く生きられるケースはあります。 前述しているように同じステージ4でも、がんの種類・治療の効き具合により経過は異なります。 よって、治療が進歩した今、ステージ4がすなわち「末期」だとは決して言えないのです。 「ステージ」はおおまな判断基準にはなりますが、病状を正確に理解するには、より詳しい医学的な情報が必要なのです。 (*)参考資料 胃癌取扱い規約第15版 大腸癌取扱い規約第9版 膵癌取扱い規約第7版増補版