前立腺がん

前立腺がんとは

前立腺がんは、近年増えているがんの1つで、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。早期に発見すれば治癒することが可能です。多くの場合比較的ゆっくり進行しますが、近くのリンパ節や骨に転移することも多く、さらに肺、肝臓などに転移することもあります。
2019年の罹患数は94,748例、男性で1位、全体で5位となっており、2020年の死亡者数12,759人にもなります。そのため、前立腺がんを予防したり、早期発見し治療することは重要な課題となっています。
初期症状はなく、気づきにくいがんですが、がん検診としてPSA検査という簡便な方法が確立しています。また、がんになったとしても生命予後が良い(つまり、死亡率が少ない)ので、生活の質を保ちながら治療を続けることが重要になります。

前立腺がんの原因

前立腺がんの原因の一つとして、高脂肪食が前立腺がんのリスクとして報告されています。そのほかにも、喫煙・肥満・運動不足は前立腺がんになりやすい生活習慣であると報告されています。
逆に、前立腺がんの予防に役立つと考えられているのは、魚に含まれているエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった成分です。他にも、緑茶のカテキン、大豆のイソフラボン、トマトのリコペンにも前立腺がん予防効果があると考えられ、注目されています。

また、射精頻度は前立腺がんに対して予防的な関係にあることが分かっています。2016年の研究で、1ヶ月に21回以上射精する男性では、前立腺がん発症のリスクが低かったことが明らかにされています。

初期症状

早期の前立腺がんでは、多くの場合ほとんど自覚症状がありません。もし、症状があるとすれば「尿が出にくい」「尿の回数が増えた」といったものです。そのため、初期には自覚症状からは気づきにくいがんの種類であると言えます。

進行すると、上記のような排尿の症状に加えて、血尿や、腰痛などの骨への転移による痛みがみられることがあります。

検査方法

主な検査はPSA検査、直腸診です。これらの検査で前立腺がんが疑われる場合には、経直腸エコー、前立腺生検などを行います。がんの広がりや転移の有無は、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィー検査などの画像検査で調べます。PSA検査は前立腺がんを早期発見するための最も有用な検査です。このPSA検査を受け、結果として値が高ければ、専門医の先生の診察を受け、次の検査を行うなど、積極的な対応が必要です。

前立腺がんの疑いがある場合に、確定診断のために必要になるのは、前立腺生検という検査です。この検査では、前立腺の組織を少量採取して、顕微鏡で観察します。

統計情報

■ 診断される数(2019年) 94,748例
■ 死亡数(2020年) 12,759人
■ 5年相対生存率(2009~2011年) 99.1%

ステージ別生存率

2011~2013年の前立腺がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:100%
ステージ2:100%
ステージ3:100%
ステージ4:65.6%
と報告されています。

前立腺がんの治療方法

前立腺がん治療方法はいくつもの方法があります。いずれの方法にもメリットやデメリットがありますので、がんの病期や体の状態に合わせて比較検討した上で治療方針が決定されます。
手術のメリットは、前立腺全摘出術によって前立腺がんを根治することが期待できることです。一方で、体への負担もあるため、高齢者や全身状態が悪いと手術による負担に耐えられないというデメリットもあります。ただし、近年では体への負担を抑えた腹腔鏡下手術、内視鏡下ミニマム創手術、ロボット支援下手術といった新たな手術方法も開発されております。

 

放射線治療には、組織内部照射療法と外部照射療法という2つの方法があります。組織内部照射には3~4日の入院が必要になるというデメリットが、外部照射では副作用が出やすいというデメリットがありますが、放射線を照射することでがん細胞を死滅させるという治療効果が期待できます。

 

内分泌療法は、がん増殖に関連している男性ホルモンを押さえ込む薬を用いることによって前立腺がんの増殖を止める方法です。手術や放射線治療が困難でも実施できるというメリットがありますが、長く治療を続けていると徐々に治療効果が下がるというデメリットもあります。

 

化学療法は抗がん剤を用いた治療です。内分泌療法同様、手術や放射線治療が困難な場合にも実施可能です。さらに内分泌療法の効果が下がった後でも化学療法は効果が期待できますが、一方で強い副作用がでる可能性があります。

ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。

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