卵巣がん

卵巣がんとは

卵巣は、子宮の左右に1つずつあるウズラの卵くらいの大きさの臓器で、骨盤内の深いところにあります。
卵巣がんは40歳代から発症が増加し、50歳代前半から60歳代前半が発症のピークとなっています。

卵巣がんが進行すると、腹部の臓器や腹壁の内側などをおおっている腹膜、大腸と小腸をおおっている大網(たいもう)にがんが広がる腹膜播種が生じます。播種とは、がん細胞が種をまいたようにバラバラと広がることです。播種した病変は、大腸や小腸、脾臓、横隔膜などに浸潤することがあります。
この他に、後腹膜リンパ節に転移することや、肝臓や肺、脳や骨などの遠くの臓器に転移(遠隔転移)することもあります。

卵巣がんの種類

・上皮性がん(約90%)
(明細胞がん、類内膜がん、粘液性がんなど)
・胚細胞がん
・性索間質性がん

卵巣がんの原因

卵巣がんの主な原因は、次の通りです。
・チョコレート嚢胞
チョコレート嚢胞は卵巣にできた子宮内膜症です。チョコレート嚢胞のある人はない人と比較して約8倍卵巣がんになりやすいという報告があります。
実際にチョコレート嚢胞に対して手術を行ったところ、3.4%の人が卵巣癌を合併しており、さらに年齢が上がると合併率が増えること、また嚢胞が大きいと合併しやすいことがわかっています。

・女性ホルモン
ゴナドトロピンは性腺刺激ホルモンともよばれ、このホルモンが増加すると女性ホルモンの分泌が増加します。ゴナドトロピンが増加する閉経期の女性に発症しやすいことや、ピルを服用するとゴナドトロピンが減少し卵巣がんのリスクが減ることから、ゴナドトロピンや女性ホルモンは卵巣がんに影響を与えていると考えられています。
・肥満、動物性脂肪、糖尿病
卵巣がんを発症した人の生活習慣を調べた調査では、体重の重い人では卵巣がんの発症が多くみられました。食生活では肉や乳製品といった動物性脂肪の摂取が多かったと報告されています。
糖尿病の人のがんになりやすさを調べた調査では、卵巣がんの発症が2.42倍に増加していました。なぜ糖尿病になると卵巣がんになりやすいのか原因は明らかになっていませんが、インスリンが卵巣がんの発生に関与しているのではないかと推測されています。

・卵巣がんに関連した遺伝子
卵巣がんの患者の17.8%は遺伝子異常があったと報告されています。最も頻度の高い遺伝子異常は遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因になるBRCA遺伝子です。BRCA遺伝子はBRCA1とBRCA2があり、どちらの異常でも卵巣がんの危険性が上がります。
最近の報告では遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断された人の約3割が卵巣・卵管の予防切除を行っています。BRCA遺伝子の異常は半分の確率で親から子に引き継がれるため、血縁者に乳がんや卵巣がんが多い人は遺伝子検査うけることが予防につながる可能性があります。

・出産経験と卵巣がんの関連性
卵巣がんの一部は排卵によって卵巣の表面に傷がつき、その傷を治す最中に発症するものがあります。このタイプの卵巣がんは排卵の回数が多いと発症しやすくなるので、初経が早い人、閉経が遅い人、妊娠回数や出産回数が少ない人が該当します。経口避妊薬の服用も排卵を抑制するので、卵巣がんのリスクを減らすと報告されています。

初期症状

卵巣がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。
症状が現れてから検査をした場合、多くの卵巣がんは進行した状態で発見されます。
卵巣は広い骨盤の中にある小さな臓器であり、尚且、あまり周りの臓器に固定されていないため位置が変わり、大きくなってもしこりとして触れることが難しいためです。
病気が進行してくると下記の症状が現れます。

・服のウエストがきつくなる
・下腹部の痛み、違和感、しこりが触れる
・食欲がなくなった
・便秘
・頻尿

検査方法

卵巣がんの疑いがある場合には、触診や内診、超音波(エコー)検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行います。がんかどうかについて正確な診断をするためには、病変の一部をとって行う病理診断(組織診断・細胞診断)が必要ですが、卵巣は骨盤内の深いところにあることから、画像検査で卵巣がんの疑いがあると判断された場合には、まず手術を行い、切除した卵巣の組織診断を行って、がんかどうかを確定します。

超音波(エコー)検査は、体の表面から臓器の様子を確認します。また、子宮や卵巣をより近くで観察するため、腟の中から超音波をあてて調べる経腟超音波断層法検査を行う場合もあります。

腫瘍マーカー検査は、血液中のCA125などを測定します。がんの有無やがんがある場所は、腫瘍マーカーの値だけでは確定できないため、画像検査の結果も合わせて、医師が総合的に判断します。腫瘍マーカー検査は、がん診断の補助や、診断後の経過・治療の効果をみることを目的に行います。

CT検査やMRI検査は、リンパ節転移や、卵巣から離れた場所への転移(遠隔転移)を調べるために検査をします。

卵巣がんの組織診断(病理検査)では、手術で切除した卵巣や卵管の組織を顕微鏡で観察し、良性・境界悪性・悪性の判定や、組織型の確定をします。
手術前に境界悪性や悪性が疑われた場合には、手術の範囲を決めるために、手術中に組織や細胞を採取し、病理診断を行うことがあります(術中迅速病理診断)。

胸水や腹水がたまっていることが手術前にわかった場合は、皮膚から針を刺して胸水や腹水を採取して調べることがあります。

また、卵巣がんは骨に転移することが多いため、骨シンチグラフィ検査で骨への転移の有無を調べます。

統計情報

■ 診断される数(2019年) 13,388例
■ 死亡数(2020年) 4,876人
■ 5年相対生存率(2009~2011年) 60.00%

ステージ別生存率

2011~2013年の卵巣がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:92.4%
ステージ2:72.5%
ステージ3:47.1%
ステージ4:31.5%
と報告されています。

卵巣がんの治療方法

卵巣がんの治療は、主に手術によりできるだけがんを取り除きます。卵巣がんは術前検査だけでは病気のひろがりや細胞の種類を断定することは困難です。卵巣がんの手術は他のがんと比較して治療だけではなく、検査の意味合いが強くなります。また、卵巣がんは再発が多ため、手術の後に薬物療法を行うことが一般的です。

 

手術は基本的に開腹手術で、両側の卵巣と卵管、子宮と大網(たいもう)を切除します。また、病期を診断するために、腹腔内各所の生検、骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)などを行うことがあります。腹膜や周りの臓器(大腸、小腸、脾臓、膀胱など)にすでにがんが広がっている場合には、目に見えるがんを可能な限り体内から取り切ることを目指します。
また、妊娠するための力を保つことを目的として、妊孕性温存手術を検討することもできます。
妊孕性温存手術を検討するときには、自分のがんの状態やリスクについて十分理解して、担当医とよく相談することが大切です。
手術後は、腸閉塞や腹腔内癒着、腹腔内膿瘍、リンパ嚢胞、リンパ浮腫などの合併症が起きることがあります。また、卵巣欠落症状と呼ばれる更年期のような症状が起きることがあります。

 

卵巣がんでは、放射線よりも抗がん剤のほうが効果が得られやすいため、最初に放射線治療を行うことは稀です。しかし骨に転移して痛みが強い場合や、脳に転移して神経の症状が現れた場合には症状を緩和するために局所的な放射線治療を行うことがあります。
また、放射線治療のできる施設は限られており、どこの病院でも可能な治療ではありません。

 

卵巣がんは進行した状態で発見されることが多く、また、早期のがんでも再発しやすいため、多くの場合は薬物療法を行います。その一方で、卵巣がんのうち漿液性がんは、薬物療法が効きやすい性質を持っています。
また、腹腔内に抗がん剤を投与するという治療が、限られた病院で実施されています。

ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。

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