咽頭がん

咽頭がんとは

咽頭は、鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部位で、筋肉と粘膜でできた約13cmの管です。咽頭は上からそれぞれ、上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つの部位に分かれています。

咽頭の周りには多くのリンパ節があるため、頸部(首)のリンパ節に転移しやすいという特徴があります。
また、下咽頭は喉頭に近いため、下咽頭がんが発見されたときには、喉頭までがんが広がっていることもあります。

咽頭がんの種類

発生した位置によって分類することが一般的で、
上咽頭がん
中咽頭がん
下咽頭がん
の3つに分類されます。

組織による分類は
扁平上皮がんが多く、まれに腺がん、未分化がん、悪性リンパ腫や黒色腫も見られます。

咽頭がんの原因

咽頭がんは部位によって異なるリスク要因があります。

上咽頭がんは主に、EBウイルス感染が原因です。このウイルスは多くの人が成人になるまでに感染しますが、無症状もしくは風症状程度で終わります。しかし、稀に体内でEBウイルスが活動し続けることがあり、慢性活動性EBウイルス感染症となり発症する可能性があります。

中咽頭がんは特にヒトパピローマウイルス(HPV)のHPV-16型感染が関連しています。HPV-16型は子宮頸がんの原因にもなるウイルスですが、キスやオーラルセックスで喉に感染すると中咽頭がんを発症する原因になります。HPVによる中咽頭がんは若い人に多く見られ、その他の原因で発症した高齢者と比較して治療効果が高いことが報告されています。

下咽頭がんはタバコとアルコール、Plummer-Vinson(プランマ―・ビンソン)症候群などがリスク要因です。特に喫煙は咽頭がんの発症リスクを増加させ、アルコールとの併用は危険性が高まることが報告されています。
※プランマ―・ビンソン症候群とは、鉄欠乏性貧血に舌炎と嚥下障害の症状を伴う疾患のことです。

初期症状

喉頭がんは、初期のうちは自覚症状がみられないことがあります。また、部位によって異なる症状が現れます。

上咽頭がんが見つかったときに最も多くみられる症状は、頸部リンパ節に転移したことによる首のしこりです。そのほかには、耳の症状(耳がつまった感じ、聞こえにくいなど)、鼻の症状(鼻づまり、鼻血、鼻水に血が混ざるなど)、脳神経の症状(目が見えにくくなる、二重に見えるなど)があげられます。

中咽頭がんの症状としては、咽頭痛、飲み込むときの違和感、口を大きく開けにくい、舌を動かしにくい、耳の痛み、血痰、口の奥・のど・首にできるしこり、声の変化があげられます。

下咽頭がんの自覚症状としては、嗄声(声がれ)、咽頭通、飲み込むときの違和感、血痰、口の奥・のど・首にできるしこりがあげられます。

検査方法

咽頭がんの検査には、触診、腫瘍マーカー、喉頭鏡検査・間接喉頭鏡検査や内視鏡検査を行います。

喉頭鏡検査・間接喉頭鏡検査は、小さな鏡がついている器具を口から入れて、鼻やのどの奥を確認する検査です。

内視鏡検査に関しては、上咽頭がんの可能性がある場合は内視鏡を鼻から入れて検査をします。中咽頭がんは同時に食道がんなどができることがあり、下咽頭がんでは同時に食道や胃にがんができることがあるため、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で重複がんがないか調べることが勧められています。
また、内視鏡で確認しながら病変の一部を採取して詳しく調べる生検も行います。

超音波エコー検査は、首の表面から超音波をあて、主に頸部リンパ節への転移の有無を調べるために行います。
さらに、CT検査やMRI検査でがんの深さ、広がり、リンパ節への転移、および他の臓器への転移を詳しく確認します。

PET-CT検査は、頸部リンパ節への転移や遠隔転移の有無を調べるときに行われることがある検査です。治療後の再発の診断にも有用なことがあります。

症状がある場合やリスクがある場合は、早めに医療専門家に相談することが大切です。

統計情報 ※ 口腔・咽頭

■ 診断される数(2019年) 23,671例(男性16,463例、女性7,208例)
■ 死亡数(2020年) 7,827人(男性5,547人、女性2,280人)
■ 5年相対生存率(2009~2011年) 63.5 %(男性60.7 %、女性69.4 %)

ステージ別生存率

2011~2013年の咽頭がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:94.9%
ステージ2:91.7%
ステージ3:76.0%
ステージ4:48.3%
と報告されています。

咽頭がんの治療方法

咽頭がんの治療は、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法がありますが、がんの進行の程度を示すステージ(病期)やがんの性質、全身状態などに基づいて検討します。

 

上咽頭がんは、手術が難しい部位です。頸部リンパ節に転移があり手術で頸部リンパ節を切除しても再発する可能性が高いため、放射線治療が優先して行われます。ただし、化学放射線療法後に頸部リンパ節にがんが残っている場合には、頸部リンパ節を取り除く手術が行われることがあります。
中咽頭がん・下咽頭がんの手術は、がんとリンパ節の切除が中心です。切除した部位の機能が失われる場合は、体の別の組織を移植する再建手術を行い、飲み込むことや発声の機能などをできるだけ保つようにします。

 

放射線治療は、放射線をあててがん細胞を破壊し、がんを消滅させたり小さくする治療です。体の表面から放射線をあてる外部照射を30〜35回(1日1回、週5日の治療を6~7週間)受けます。咽頭がんのうち特に上咽頭がんでは効果的といわれています。副作用としては嗄声や皮膚炎、粘膜炎、粘膜炎による嚥下困難などの症状が現れる場合があります。

 

抗がん剤治療は抗がん剤は全身に作用するため、がんのサイズにかかわらず効果が期待できます。しかし、正常細胞にも影響を及ぼすため、一般的な副作用として吐き気、下痢、口内炎、脱毛などが挙げられます。また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を使用場合もあります。

ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。

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