子宮頸がん

子宮頸がんとは

女性の生殖臓器である子宮は骨盤の中央に位置しており、その両側には左右の卵巣があります。子宮は、解剖学的に子宮の下部、つまり子宮の出口にあたる子宮頚部と、子宮の上部、子宮の袋の部分に相当する子宮体部より構成されています。子宮がんとは子宮の上皮性悪性腫瘍を指し、子宮頚部に発生する子宮頚がんと子宮体部に発生する子宮体がんに大別されます。

子宮頸がんは、近年20代・30代の若い世代でも子宮頸がんが増加しており、40歳代でピークを迎えるがんです。CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)という、がんになる前の状態を経てがんになります。
子宮頸がんは進行すると、リンパ節や周囲の組織に広がることがあり、他の臓器にも転移する可能性があります。

腟に近い側にできた場合には、婦人科での観察や検査がしやすいため発見されやすくなりますが、より奥の筒状部分にできると発見が難しいこともあります。しかし、子宮頸がんは予防が可能で、定期的な検診やワクチン接種が効果的な予防策です。早期に発見し治療すれば、生存率は高くなります。したがって、予防と早期発見が非常に重要です。

子宮頸がんの種類

・扁平上皮がん
(NILM、ASC-US、ASC-H、LSIL、HSIL、SCC)
・腺がん
(AGC、AIS、Adenocarcinoma、other malig)

子宮頸がんの原因

子宮頸がんの主な原因とリスク要因は、次の通りです。

・ヒトパピローマウイルス感染
子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス感染であることが明確になってきています。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染するウイルスです。しかし、ヒトパピローマウイルスに感染したとしても、すぐに子宮頸がんになるわけではありません。大元の原因であるヒトパピローマウイルス感染を防ぐためには、子宮頸がんワクチンの接種をしておくことが、予防のために重要であると考えられます。

・喫煙
喫煙者では、非喫煙者に比べて子宮頸がんのリスクが2~3倍になっていることが分かっています。また、長期間の経口避妊薬の使用も子宮頸がんのリスクであることも分かっています。

初期症状

子宮頸がんの症状は、がんになる前の段階であるCINやAISでは特に症状はありません。
しかし、子宮頸がんが進行すると、以下のような症状が現れることがあります。

・月経中でないときや性交時の出血
・においを伴う濃い茶色や膿うみのようなおりもの
・水っぽいおりものや粘液の増加
また、がんが子宮の外に広がると、骨盤や下腹部・腰の痛み、尿や便に血が混じる、下肢のむくみなどが出ることもあります。

検査方法

子宮頸がんの検査では、まず子宮頸部の細胞診を行います。この検査では、子宮頸部から細胞を採取し、顕微鏡で細胞を詳細に観察し、異常な細胞があるかどうかを確認します。
CINやAIS、がんなどの疑いがある場合には、コルポスコープ(腟拡大鏡)を使用して子宮頸部を拡大して詳細に観察します。異常箇所の組織を採取し、組織診断が行われ、がんの有無や進行度を確認します。

また、子宮の周りや体全体にがんが広がっていないか確認するために、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査、PET検査を行います。また膀胱や直腸を内視鏡で観察し、浸潤の有無を確認することもあります。

血液中の腫瘍マーカー(SCC、CA125、CEAなど)の検査は、がんの存在や治療の効果を評価するのに役立ちます。ただし、腫瘍マーカーの値だけでは確定診断には不十分であり、他の検査結果と組み合わせて判断されます。

統計情報

■ 診断される数(2019年) 10,879例
■ 死亡数(2020年) 2,887人
■ 5年相対生存率(2009~2011年) 76.50%

ステージ別生存率

2011~2013年の子宮頸がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:93.6%
ステージ2:82.2%
ステージ3:67.9%
ステージ4:26.5%
と報告されています。

子宮頸がんの治療方法

子宮頸がんの治療方法は、大きく分けて、手術・放射線治療・抗がん剤などがあります。
前がん病変(CIN3またはAIS)やⅠA期の子宮頸がんでは、まず子宮頸部円錐切除術などで組織診を行い、その結果に基づいて治療方針を決めていくことが一般的です。
子宮頸がんの治療は、妊娠や出産に影響を及ぼすことがあります。自分のがんの状態や再発などのリスクについて十分理解した上で、自分の希望を伝えて、担当医とよく相談することが大切です。

 

手術の種類:円錐切除術、単純子宮全摘出術、準広汎子宮全摘出術、広汎子宮全摘出術、広汎子宮頸部摘出術があります。手術後の合併症としては、リンパ浮腫、排尿障害、卵巣欠落症状などがあります。合併症や再発リスク、将来子どもをもつことを希望している場合などによって選択肢が異なりますので、治療開始前に担当医に確認しましょう。

 

放射線治療の種類:外部照射、腔内照射、組織内照射
ほとんどの病期で放射線治療が行えますが、進行した場合は化学療法と併用されることもあります。放射線治療は卵巣の機能に影響を及ぼしますが、手術よりも排尿機能や性生活への影響が少ないとされています。重粒子線治療も一部の子宮頸がんに対して保険適用となりましたが、治療を行うことのできる施設は限られています。

 

薬物療法(抗がん剤治療)は、遠隔転移のある進行がんや再発がんに対して行われ、生活の質と生存期間を延ばすことが目標です。抗がん剤には大きく分けて細胞障害性抗がん剤と分子標的薬の2種類があります。抗がん剤治療は、全身に効果があるので、転移したがんに対しても治療効果があるというメリットがありますが、副作用も全身に出てしまうというデメリットがあります。

ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。

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