肝臓がん

肝臓がんとは

肝臓がんは自覚症状が乏しく、症状で診断することが難しい病気です。日本では多くの人がB型・C型肝炎ウイルスに感染し、慢性肝炎や肝硬変を持っています。肝硬変の人は特に肝臓がんのリスクが高いといわれています。
肝臓がんは原発性と転移性があり、原発性の大部分は肝細胞がんで、一部が肝内胆管がん(胆管細胞がん)です。日本での肝臓がんの90%以上は肝細胞がんで、これは肝臓の主要な細胞ががん化したもので、原発性の10%は肝臓内にある胆管という管から発生した胆管細胞がんです。このページでは90%を占める肝細胞がんについて主に説明します。
※肝内胆管がんについては、「胆道がん」のページをご覧ください。

肝臓がんの種類

・原発性肝がん(肝細胞がん、肝内胆管がん)
・転移性肝がん

肝臓がんの原因

肝臓がんの主要な原因として、B型およびC型の肝炎ウイルスの感染が挙げられます。日本では、肝細胞がんの大部分はこれらのウイルスの持続感染に起因しており、特にC型肝炎ウイルスの感染が約65%、B型肝炎ウイルスの感染が約15%と推測されています。肝炎ウイルスに感染した場合、肝臓内で炎症と細胞の再生が繰り返されることで、遺伝子の突然変異のリスクが高まり、結果として肝がんが発生しやすくなります。

さらに、B型・C型肝炎ウイルスに感染後、治療を受けない場合、慢性的な炎症を起こす慢性肝炎の状態に進行する可能性があり、その状態が20年ほど続くと、肝臓の組織が硬化して肝硬変となります。軽度の慢性肝炎では1年に肝臓がんを発症する割合は0.5%ですが、肝硬変になると7.0%と大幅に増加します。

また、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も肝臓がんのリスクを増加させる要因として知られています。これは、アルコールを摂取しないにも関わらず、肝臓に脂肪が蓄積する状態を指します。さらに、カビから産生される毒物であるアフラトキシンの摂取、糖尿病、喫煙、そして過度なアルコール摂取も、肝臓がんのリスクを増加させる要因として挙げられます。特に、肝炎ウイルスに感染している人がアルコールを摂取すると、そのリスクはさらに高まることが研究で示されています。

初期症状

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、初期の肝臓がんや炎症では自覚症状がほとんど現れません。肝臓の被膜を引き延ばすほど大きくなったがんでは、痛みが感じられることがあります。肝機能が低下すると、だるさ、むくみ、かゆみ、栄養バランスの崩れ、黄疸などの症状が現れることがありますが、これらは肝硬変などの他の疾患でも見られる症状です。多くの日本人の肝臓がんは、B型やC型肝炎ウイルス感染を経て、慢性肝炎や肝硬変を発症するため、これらの症状に注意が必要です。また、進行した肝細胞がんでは、腹部のしこりや圧迫感、痛みが出ることもあります。

検査方法

まずは血液検査、肝炎ウイルス検査、腫瘍マーカーの検査をします。いずれかの検査に異常があった場合は超音波検査やCT検査やMRI検査が行われることが多いです。さらに、画像検査でがんの良性か悪性かの区別が難しい場合は、病変の一部を採って詳しく調べる生検が行われることもあります。

また、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変がある人、ウイルス感染を伴わない肝硬変と診断された人は、3~6カ月ごとの定期的な超音波(エコー)検査や腫瘍マーカー検査を受けることが勧められています。

統計情報

■ 診断される数(2019年) 37,296例(男性25,339例、女性11,957例)
■ 死亡数(2020年) 24,839人(男性16,271人、女性8,568人)
■ 5年相対生存率(2009~2011年) 35.8 %(男性36.2 %、女性35.1 %)

ステージ別生存率

2011~2013年の肝臓がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:64.0%
ステージ2:40.8%
ステージ3:15.2%
ステージ4:3.7%
と報告されています。

肝臓がんの治療方法

肝臓がん治療の基本は物理的にがん組織を取り除いたり、死滅させることです。方法としては肝切除術(開腹手術もしくは腹腔鏡手術)、穿刺療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼術など)、肝動脈塞栓術、放射線治療(陽子線、重粒子線)などがあります。

 

手術には開腹手術と腹壁に小さな穴をあけてそこから器具を通して行う腹腔鏡手術があります。開腹手術の場合、入院期間は約2週間ですが、腹腔鏡手術では傷の1つ1つが小さいため回復が早く、入院期間が短いです。腹腔鏡手術が可能かどうかはがんのできた位置や個数などで決まります。

 

抗がん剤治療は、全身に効果を発揮するため、肝臓以外に転移がみられ、手術や放射線治療の適応がない方でも体力があり肝機能が保たれていれば、抗がん剤による治療が可能です。

 

放射線治療は従来、重篤な肝機能障害が起こりやすいことから強い放射線を当てることができず、肝臓がんの治療としては期待できませんでした。しかし近年、ピンポイントでの照射技術が向上し、がんに対してのみ強い放射線を当てることができるようになりました。

 

穿刺療法には、ラジオ波焼灼療法とエタノール注入療法があります。個数が少なく、小さい病変の場合は肝切除術と同じ程度の治療効果が期待できます。しかし治療できる範囲に限りがあり、通常は3㎝以下の病変に対して行われる治療です。

 

肝動脈塞栓術とは、病変にむかう血管を人工的に塞いでがんの栄養を遮断する治療で、肝動脈化学塞栓療法(TACE)と肝動脈塞栓療法(TAE)があります。肝動脈化学塞栓療法(TACE)は、細胞障害性抗がん薬と造影剤を混ぜて注入した後、塞栓物質を注入する治療法です。肝動脈塞栓療法(TAE)は、塞栓物質のみを注入する治療法です。肝臓のほかの部位にはほとんど影響を与えない治療ですが、しばらくすると病変は別の血管から栄養をもらうようになるため、完治は難しく、繰り返し行うことが必要になる場合も多いです。

 

生体肝移植は、肝臓を全部取り除き入れ替えることによって、がんが無くなるだけでなく、肝不全状態にある肝臓疾患そのものも改善が期待できます。ただし、自分の体が他人の肝臓に対して免疫反応を起こさないようにするため、移植後は一生免疫抑制剤を飲み続ける必要があります。また、保険適応となるのは、がんが1個で5㎝以下もしくは3㎝以下のがんが3個以内の場合で、かつ肝不全の状態にある人です。また、検査などの費用は全額自己負担金銭的な負担が大きい治療です。

ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。

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