肺がんとは
肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。進行すると、がん細胞は周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れにのって転移することもあります。転移しやすい場所はリンパ節や、肺の中のほかの部位、骨、脳、肝臓、副腎です。
肺がんはがんの中で最も年間死亡者数の多い病気です。肺がん検診も行われていますが、実際の肺がん検診受診率は半分程度と報告されております。また、肺がんのタイプによっては胸部レントゲンで発見しにくいものもあったり、性別や喫煙の有無により発症しやすいタイプが異なるため、自分がどのタイプの肺がんになりやすいのかを知っておくことが重要です。
肺がんの種類
非小細胞肺がん
・腺がん
・扁平上皮がん
・大細胞がん
小細胞肺がん
肺がんの原因
肺がんの発症は男女ともに50歳を過ぎたあたりから増え、年齢が上がれば上がるほど発症率は増加します。
性別では男性が女性の2倍発症していますが、その原因としては喫煙者に男性の方が多いことが関連していると考えられます。肺がんの原因としてタバコは有名ですが、そのほかにもアルコールや女性ホルモンなどで肺がんの発症率が上がるという報告があります。逆にキャベツやイソフラボンを摂取すると肺がんの危険性を下げる効果が報告されています。
初期症状
主な症状としては、咳や痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさや動悸、血痰(痰に血が混じる)、発熱などがあげられます。このような症状はがんの発生する位置によって、早期から出現する場合もあれば、進行するまで現れない場合もあります。いずれも気管支炎や肺炎などの呼吸器の病気にも共通する症状で、「この症状があれば必ず肺がん」という症状はありません。原因が分からない咳や痰が2週間以上続く場合や、発熱が5日以上続く場合、血痰が出る場合には、早めに身近な医療機関を受診しましょう。
また、このような症状がないまま進行し、医療機関での定期的な検診や、ほかの病気の検査で偶然見つかることもあります。
なお、脳や骨などに転移すると、背中や肩の痛み、頭痛やふらつきなどの症状が出ることもあります。
検査方法
肺がんが疑われるときは、胸部X線検査や喀痰細胞診を行います。
これらの検査で異常が見つかった場合には、胸部CT検査や、肺がんが疑われる部位から細胞や組織を採取する病理検査を行い、がんかどうか、がんの場合はどのような種類のがんなのかについての診断を確定します。組織や細胞を採取するために最も多く行われているのは気管支鏡検査ですが、場合によっては経皮的針生検や胸腔鏡検査などを行うこともあります。
統計情報
■ 診断される数(2019年) | 126,548例(男性84,325例、女性42,221例) |
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■ 死亡数(2020年) | 75,585人(男性53,247人、女性22,338人) |
■ 5年相対生存率(2009~2011年) | 34.9 %(男性29.5 %、女性46.8 %) |
ステージ別生存率
2011~2013年の肺がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:85.6%
ステージ2:52.7%
ステージ3:27.2%
ステージ4:7.3%
と報告されています。
肺がんの治療方法
肺がんの治療方法は組織型によって大きく異なりますが、手術、薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤)、放射線療法などがあります。またこれらの治療は単独で行う場合もあれば、組み合わせて行なう場合もあります。
肺がんの治療方針を決めるときには、がん細胞のタイプやがんのひろがり具合、本人の体力や日常生活がどのくらい自立しているかなどを考慮します。
特に治療に関して小細胞がんか非小細胞がんであるかは重要なポイントです。理由として小細胞がんは進行が早く転移を起こしやすいが、薬物療法や放射線治療の効果が得られやすいという特徴があるためです。非小細胞がんの基本的な治療方針は手術であり、大きく治療内容が異なります。
肺がんの手術には肺葉切除術、縮小手術、片肺全摘術があり、手術方法も胸を開いて行う開胸手術と、小さな傷で器具を用いて行う胸腔鏡手術があります。
薬物療法には従来の抗がん剤に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など、がん細胞のタイプに合わせた治療が開発されています。
肺がんの再発や転移は治療後2年以内に起きることが多く、その場合には初期治療と同様に病気の位置やひろがり具合を考慮して再度治療方針を決定します。
●ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。