胃がん

胃がんとは

胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことにより発生します。がんが大きくなるにしたがい、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側に深く進んでいきます。
がんの中でも発症率の高い病気で2019年の報告では男性第3位、女性第4位、全体では3番目に多い病気と報告されています。そして、2017年がんで死亡した人の中も胃がんは男性第3位、女性第4位、全体では3番目と死亡者数の多い病気でもあります。しかし、胃がんの多くは原因が判明しており、定期的に検診をうけることで早期発見すれば予後の良い病気でもあります。胃がんがどのような病気でどんなことが原因になり、どのような経過をたどるかを知っておくことは胃がんから体を守ることにつながります。

胃がんの種類

・分化型(乳頭型腺がん、高分化型管状腺がん、中分化型管状腺がん)
・未分化型(スキルス胃がん含む)(低分化腺がん、印環細胞がん)
※スキルス胃がんは未分化型が多いですが、未分化型のすべての胃がんがスキルス胃がんというわけではありません。

胃がんの原因

胃がんの9割を占める胃腺がんの原因はピロリ菌感染であることが明らかになってきています。ピロリ菌に感染した胃粘膜はその後長い年月の間、胃炎の状態が続き、萎縮性胃炎、そして腸上皮化性という状態を経て胃がんを発症します。そのため、胃腺がんの発症は40歳前にはほとんどみられませんが、40歳を過ぎると急激に数が増加します。

昔は井戸水などからのピロリ菌感染が多く、上下水道が整った現代では新たにピロリ菌に感染する危険性は減ってきています。しかしピロリ菌をもつ親から口移しで食べ物を与えられたりした場合は、現在でも感染の可能性はあります。特に免疫力が低い5歳未満の間に感染した場合は、胃炎を経由して将来胃がんを発症する危険性があります。

そのほかに胃がんを発症しやすいと報告されている原因は、タバコを吸う人、食事の塩分量が多い人、家族で胃がんになった人がいる場合等です。
逆に、ビタミンCや緑茶の摂取が多い人、野菜の摂取量が多い人は胃がんになりにくいという報告があります。

初期症状

胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合もあります。

代表的な症状は、胃の痛み・違和感・不快感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。また、がんから出血することにより黒い便(血便)が出ることや、血液検査で貧血を指摘されることもあります。しかし、これらは胃がんだけではなく、胃炎や胃潰瘍等でも起こる症状です。そのため、胃炎や胃潰瘍などで内視鏡検査を受けたときに、偶然がんが見つかることもあります。

なお、食事がつかえる、体重が減る、といった症状がある場合は、進行胃がんの可能性もあります。

検査方法

胃がんが疑われた場合には、まず、病変の有無や場所を調べるために、胃内視鏡検査または胃バリウム検査を行います。がんが疑われるところがあると、内視鏡検査でその部分をつまんで取る生検を行い、顕微鏡でがん細胞を探し出す病理検査をします。
胃がんと確定すれば、がんのひろがり具合を診断するために造影剤を使ったCTやMRI、超音波検査やPET検査などを必要に応じて行います。

統計情報

■ 診断される数(2019年) 124,319例(男性85,325例、女性38,994例)
■ 死亡数(2020年) 42,319人(男性27,771人、女性14,548人)
■ 5年相対生存率(2009~2011年) 66.6 %(男性67.5 %、女性64.6 %)

ステージ別生存率

2011~2013年の胃がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:98.7%
ステージ2:66.5%
ステージ3:46.9%
ステージ4:6.2%
と報告されています。

胃がんの治療方法

胃がんの治療方法は病気のひろがり具合(ステージ)によりガイドラインで治療が決まっています。ステージ3までは手術、ステージ4や再発の場合は抗がん剤や緩和ケアが基本となります。

 

手術は内視鏡手術、腹腔鏡下手術、開腹手術があり、がんの再発の危険性を極力低くしつつ、手術後の生活の支障が最低限であるように考えた上で切除範囲を決めて手術が行われます。手術のメリットは、病変を体外に取り出し、その病変の病理検査を行うことで現在の病気の状態や今後の再発の可能性はどのくらいあるかがきちんと評価できる点です。手術の場合は、画像では見えないがん細胞を顕微鏡で検査することでCTやPET検査よりも精密に細胞レベルで診断が可能です。

 

抗がん剤は大きく3つに分けられ、細胞障害性抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があります。病気のひろがりが手術範囲を超えている場合に手術できる範囲まで病気を小さくする目的で行われたり、手術の結果から再発の危険性が高い場合、もしくは再発した患者に対して行われます。手術は病気がひろがっていると思われる範囲をすべて取り切る治療ですが、抗がん剤は基本的に全身に作用するため、画像検査で見つけることができない病変があった場合にも有効です。抗がん剤はがん細胞によく効くように改良されていますが、正常な細胞にもダメージを与えます。抗がん剤として使われる薬は複数の種類があるため、それぞれの効果や副作用を理解して治療を受けることが重要です。
放射線療法は、胃はもともとゴムのように伸びる臓器であり、あまり固定されていないため、胃がんに対しては一般的ではありません。

ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。

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