腎臓がんとは
腎臓がんは、腎臓の細胞がん化したもので、腎実質の細胞ががん化して悪性腫瘍になったものを腎細胞がんといいます。
同じ腎臓にできたがんでも、腎盂にある細胞ががん化したものは「腎盂がん」と呼ばれ、腎細胞がんとは区別されます。なお、腎臓がんのほとんどが腎細胞がんであるため、一般的に「腎臓がん」とは腎細胞がんのことをいいます。
腎細胞がんは、さまざまな部位や臓器に転移する可能性がありますが、特に転移しやすい部位は肺です。骨、肝臓、副腎や脳などに転移することもあります。
腎臓がんの種類
最も多い「淡明細胞型腎細胞がん」(70~80%を占める)の他の、多房嚢胞性腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がん、肉腫様がん、集合管がんなど、合わせて14種類の組織型に分類されます。
腎臓がんの原因
腎臓がんの好発年齢は50〜70歳で、性別では男性が女性の1.5倍発症しやすいというデータになっています。
原因は、長期間にわたる非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用や、高血圧、喫煙が挙げられます。
NSAIDは鎮痛剤(痛み止め)の1種で、炎症を抑える効果がありますが、4年以上服用した場合、腎臓がんになるリスクが1.3倍、10年以上の服用では3倍増加すると報告されています。
高血圧になったことがある人は通常の人よりも4.3倍腎臓がんになりやすいく、喫煙者は非喫煙者と比べて、1.4~2倍発症しやすいと報告されています。
また、慢性透析をしている人に合併しやすい後天性のう胞性腎疾患から高確率で腎細胞がんが発生することが判明しています。
初期症状
初期の段階では、ほとんど自覚症状が現れません。そのため、小さな腎細胞がんは健康診断や他の疾患の検査中に偶然発見されることがほとんどです。肺や骨、肝臓、脳に転移したがんが先に見つかり、詳しく検査した結果、腎細胞がんが見つかることも少なくありません。
腎細胞がんが成長すると、以下のような症状が現れることがあります。
血尿:尿の色が赤、茶色、オレンジ色になることがあります。色の違いは、血液の量や出血からどのぐらい時間が経過したかによって異なります。
脇腹の痛み:腎臓は背中側に位置しており、がんが大きくなるとその部位に痛みを感じることがあります。
その他には腹部の痛み・しこり、足のむくみ、食欲不振、吐き気、便秘などが現れることがあります。
また、転移に伴う症状として、肺への転移では咳や血痰、胸の痛み、骨への転移では骨の痛みや骨折、脳への転移では頭痛や片側の運動麻痺が見られることがあります。
検査方法
腎臓がんは多くの場合、腹部超音波(エコー)検査や造影CT検査で見つかります。
腎機能に障害がある、アレルギーがあるなどの理由で、CT検査で使われる造影剤が使えない場合や、CT検査や超音波検査のみで診断が難しい場合にはMRI検査を行います。
また、がんの再発や他の部位への転移を評価するために、他の画像検査ではっきりしない場合、補助的な検査としてPET検査が行われる場合があります。
また、肺への転移がないかを調べる目的で、胸部のCT検査も行う場合があります。
生検は、がんの有無や、がんの悪性度などを調べる検査です。細い針を使用して組織の一部を採取し顕微鏡で詳しく調べます。画像検査を行ってもはっきりとした診断ができない場合に、必要に応じて実施します。
その他に、骨の痛みや血液検査の結果から骨への転移が疑われる場合に、骨シンチグラフィを行う場合があります。
統計情報 ※ 腎がん・尿路がん(膀胱除く)
■ 診断される数(2019年) |
30,458例(男性20,678例、女性9,780例) |
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■ 死亡数(2020年) | 9,712人(男性6,162人、女性3,550人) |
■ 5年相対生存率(2009~2011年) | 68.6 %(男性70.4 %、女性64.8 %) |
ステージ別生存率
2011~2013年の腎臓がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:97.2%
ステージ2:79.7%
ステージ3:71.5%
ステージ4:17.8%
と報告されています。
腎臓がんの治療方法
腎臓がんは抗がん剤や放射線治療が効きにくく、治療の基本は手術となります。
手術の種類には、根治的腎摘除術(腎臓すべて切除)と腎部分切除術(腎臓の一部切除)があります。どちらが適切かはがんのステージや位置によって異なりますが、ステージ1に該当する4㎝以下のがんの場合は、その病変の位置にもよりますが、腎部分切除術になることが多いです。手術方法は開腹手術と腹腔鏡手術、または手術支援ロボットを用いる施設もあります。ロボット手術は精密さや合併症のリスク軽減に優れています。手術のメリットは、がんを体内から完全に取り除け、がんのタイプを評価できることです。ただし、合併症のリスクも存在します。
腎臓はもともと体の毒素を除去する臓器であり、抗がん剤が細胞に入っても、すぐに排出されてしまうため抗がん剤の効果が得られにくい臓器です。腎臓がんは特にがんの周りに新しい血管を作ることで栄養を取り込んで大きくなるため、分子標的薬の効果が期待できます。また、現在は新たな免疫療法として、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボとヤーボイ)が開発されました。どの治療法も副作用には注意が必要です。
放射線治療は腎臓がんの根治を目指す場合はほとんど行われませんが、転移部位の症状緩和に利用されることがあります。その他の治療法には、経皮的凍結療法があります。自費診療ではラジオ波焼灼療法があります。これらの治療はごく小さながんに対して有効で、合併症は比較的少ないです。
●ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。