膀胱がんとは
膀胱がんは、膀胱にできるがんの総称で、50歳を超えると急増するといわれています。
膀胱がんの大部分は尿路上皮がんで、がんが膀胱の壁にどれくらい深くまで広がっているかによって、筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分かれます。時にリンパ節、肺、肝臓、骨などに転移することがあります。
膀胱がんには他にもいくつかの種類がありますが、ここでは主に尿路上皮がんについて説明をします。
膀胱がんの種類
・尿路上皮がん
・扁平上皮がん
・腺がん
・小細胞がん
膀胱がんの原因
膀胱がんの主な原因とリスク要因は、次の通りです。
喫煙:喫煙は膀胱がんのリスクを2.14倍高めているということが明らかになりました。タバコに含まれる発がん物質が尿に混じり、膀胱の壁に遺伝子変異を引き起こす可能性があります。
カフェイン:コーヒーを1日1杯以上飲む男性は、全く飲まない人と比べて膀胱がんの発症リスクが2.2倍高くなることが報告されています。また、女性はコーヒーの摂取量では差を認めなかったものの、5杯以上の緑茶を飲む人は膀胱がんの発症リスクが2.3倍といわれています。
染料: 染料の製造に使用される物質(ナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニル)には膀胱がんを引き起こすリスクがあるものが含まれています。これらの物質に暴露する職業では膀胱がんの発症が多く見られます。
初期症状
膀胱がんの主な症状には、血尿や頻尿、排尿時の痛み、尿が残る感じ、切迫した尿意などがあります。出血は必ず継続するとは限らず、血が出たり止まったりを繰り返すこともあります。
このうち、膀胱がんに特徴的なのは、痛みなどのほかの症状を伴わない血尿です。
がんが進行すると、尿が出にくくなったり、わき腹や腰、背中が痛んだり、足がむくんだりすることもあります。
ほかに症状がなく、血尿も出たり出なかったりすることがあるため、受診せずに放置している間に進行してしまうこともあります。気になる症状がある場合には、早めに泌尿器科を受診しましょう。
検査方法
膀胱がんの検査では、まず尿検査を行い、がん細胞が含まれているかどうか、尿中の腫瘍マーカーを確認します。その後以下のような検査を行います。
超音波検査:がんの位置や形、周辺の臓器との関係などを確認するために行います。
CT検査・MRI検査:がんの深さや広がりを見たり、リンパ節やほかの臓器への転移を確認したりするための検査です。
膀胱鏡検査(内視鏡検査):内視鏡を尿道から膀胱に挿入し、がんの有無、位置、大きさ、形状などを直接確認します。膀胱がんの診断と治療方針の決定のために、必ず行う検査です。
膀胱がんの確定診断のためには、治療を兼ねたTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行います。
TURBTについては「治療方法」で説明します。
統計情報
■ 診断される数(2019年) | 23,383例(男性17,498例、女性5,885例) |
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■ 死亡数(2020年) | 9,168人(男性6,244人、女性2,924人) |
■ 5年相対生存率(2009~2011年) | 73.3 %(男性76.5 %、女性63.0 %) |
ステージ別生存率
2011~2013年の膀胱がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:86.4%
ステージ2:68.2%
ステージ3:51.6%
ステージ4:22.9%
と報告されています。
膀胱がんの治療方法
膀胱がんの治療では、まず始めに診断と治療を兼ねてTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行い、その後の治療法を検討していきます。
TURBTは、尿道から膀胱内に内視鏡を挿入し、がんを電気メスで切除する治療法で、検査も兼ねて行います。手術は全身麻酔または腰椎麻酔をします。筋層非浸潤性膀胱がん(0期・Ⅰ期)の場合、TURBTでがんを切除できることもあります。初回のTURBTで再発、または筋層浸潤性膀胱がん(Ⅱ期・Ⅲ期・Ⅳ期)やリンパ節への転移などの進展のリスクが高いと判断された場合や、筋層まで切除せず、もう一度TURBTを行うことがあります。TURBTの合併症として、出血(血尿)、頻尿などが起こることがあります。
TURBTの後に、筋層非浸潤性膀胱がんの再発や進展を予防する目的で、細胞障害性抗がん薬やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱内に注入する膀胱内注入療法があります。注入は尿道からカテーテルを通して行います。副作用として、頻尿、排尿時の痛み、血尿、発熱などの症状が出現することがあります。
なお、上皮内がん(CIS)の場合は、治療を目的としてBCGを注入します。
手術(外科治療)としては、膀胱全摘除術、尿路変向(変更)術があります。
男性では膀胱、前立腺、精のう、遠位尿管と骨盤内のリンパ節を摘出します。尿道再発のリスクが高い場合には尿道も同時に切除します。女性では、膀胱、子宮、腟の一部、遠位尿管、尿道を摘出し、骨盤内のリンパ節を摘出します。
尿路変向術は、回腸導管造設術・尿管皮膚ろう造設術・自排尿型新膀胱造設術があります。
進行していて切除が難しい場合や、転移や再発したがんに対して全身投与で薬物療法を行います。
また、筋層浸潤性膀胱がんで膀胱温存を希望する場合や全摘術が難しい場合に、TURBTや薬物療法と組み合わせた集学的治療の一部として放射線治療を行う場合があります。
●ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。