膵臓がん

膵臓がんとは

膵臓がんは早期発見の難しい病気です。膵臓は胃の背中側にある臓器で、膵臓の真ん中を主膵管という管が通っており、膵臓で作られた消化液である膵液が流れています。多くは膵管に発生し、そのほとんどは腺がんという組織型(がんの種類)です。膵臓がんは小さいうちから膵臓の周りのリンパ節や肝臓に転移しやすく、おなかの中にがん細胞が散らばって広がる腹膜播種が起こることもあります。

膵臓はさまざまな物質を作って分泌する働きをしています。分泌方法は外分泌と内分泌があり、外分泌は食べ物の消化に必要な酵素(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなど)の入った膵液を作り、主膵管を通じて十二指腸に排出することです。内分泌は作ったホルモンを血管の中に分泌することで、血糖の調節を行うインスリンやグルカゴンなどを産生しています。

膵臓がんは年々増え続けている「がん」の一つで、2021年にはがん死亡原因の第4位となっています。

膵臓がんの種類

約95%が腺がんです。
腺扁平上皮癌、粘液癌、退形成癌などの組織型もあります。

部位による分類は以下の通りです。
膵頭部がん:膵臓の右側、十二指腸に近い約1/3
膵尾部がん:膵臓の最も左側約1/3
膵体部がん:真ん中の部分は膵体部とよびます。膵臓

膵臓にできる腫瘍には、このほかに、膵管内乳頭粘液性腫瘍、腺房細胞癌、膵神経内分泌腫瘍などもあります。

膵臓がんの原因

膵臓がんの原因は1つではありませんが、膵臓がんになりやすい人の特徴はいくつか報告されています。

糖尿病は、膵臓がん患者の4人に1人が糖尿病の既往歴があり、糖尿病患者は膵臓がんを発症するリスクが約2倍と考えられています。
喫煙者は、非喫煙者に比べて男性で1.59倍、女性で1.81倍膵臓がんになりやすく、男性のみですが、禁煙すると膵臓がんのリスクが低下する可能性があります。
BMIが30以上の男性(肥満)は、正常BMIの人と比べて1.71倍膵臓がんになりやすく、現在肥満である人も、20歳前後に肥満であった人も特に男性では膵臓がんになりやすいと考えられています。
慢性膵炎の方は、一般の人よりも5.8倍膵臓がんを発症するリスクが高いといわれています。
血縁者に膵臓がんの患者がいる場合、膵臓がんのリスクが高まるという報告もあります。

初期症状

膵臓がんは、初期段階では症状が出にくいため、早期の発見が難しいのが特徴です。また、部位によって出やすい症状が異なります。

膵頭部がんでは、肝臓で産生された胆汁の出口でがんが大きくなると膵臓だけでなく、肝臓の症状が現れることがあります。特に、肌や目の白目が黄色くなるという黄疸が出現します。
膵体部・膵尾部がんでは、がんによって膵管が狭くなり膵液の流れが悪くなることで腹痛や背中・腰の痛みが現れることがあります。

また、部位に関係なく糖尿病の症状が現れることがあります。膵臓は血糖の調節を行うインスリンを作る役割がありますが、がんの影響でインスリンの分泌が減少することが原因です。さらに、摂取した栄養をがんが消費してしまったり、消化液が適切に分泌されなくなることによって、体重減少がみられることもあります。

検査方法

膵臓がんの検査は、膵酵素や腫瘍マーカーを調べるために血液検査をします。また、超音波検査やCT検査、MRI検査、PET検査など行い、がんの位置や広がりを確認します。
検査の結果から膵臓がんが疑われる場合には超音波内視鏡検査 (EUS)で、胃や十二指腸から膵臓を詳しく観察します。
これらの検査によって診断が確定できなかった場合には、内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP)を行います。確定的ながんの診断を行うために、組織や細胞を採取し、顕微鏡で詳しく調べる病理検査を行います

統計情報

■ 診断される数(2019年) 43,865例(男性22,285例、女性21,579例)
■ 死亡数(2020年) 37,677人(男性18,880人、女性18,797人)
■ 5年相対生存率(2009~2011年) 8.5 %(男性8.9 %、女性8.1 %)

ステージ別生存率

2011~2013年の膵臓がんのステージ別5年相対生存率は
ステージ1:49.8%
ステージ2:21.6%
ステージ3:6.9%
ステージ4:1.9%
と報告されています。

膵臓がんの治療方法

膵臓がんの治療は、がんの進行度や位置によって異なるアプローチが取られます。早期のがんの場合、主な治療は手術になります。しかし、がんが進行している場合や、手術でがんを取り切れるか判断が難しい位置にある場合は、手術の前に化学療法や放射線治療を先に行うことも考慮されます。手術はがんを確実に取り除くメリットがある一方で、手術後の消化吸収や食事の変化、さらには合併症のリスクも伴います。

 

放射線治療は、放射線治療と化学療法(細胞障害性抗がん薬による治療)を組み合わせた化学放射線療法と、手術が難しい場合や痛みの緩和を目的とした方法があります。また、ピンポイントにあてることが可能な重粒子線治療も対象になる場合があります。放射線治療の副作用としては放射線が通る皮膚の部分に日焼けのような変化が見られます。また、放射線治療のできる施設は限られているので、希望する場合は担当医に相談しましょう。

 

抗がん剤治療は、主に細胞障害性抗がん薬を使います。なお、病状や治療の状況によって、がん遺伝子検査が行われることがあります。検査結果によっては、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を使う場合があります。抗がん剤は体の中の小さながん細胞にも効果を発揮しますが、副作用のリスクも考慮する必要があります。

 

また、免疫療法という方法もあり、これは体の免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。さらに、保険適応外ではありますが、新しい治療法としてナノナイフ治療があります。

ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する癌腫として使われることもありますが、特に区別しないこともあります。当ページでは、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。

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